黄斑円孔

黄斑円孔とは

網膜の中心の黄斑と呼ばれる神経網膜に穴があいて視力が低下する疾患です。本来、黄斑の視細胞は碁盤の目のように整然と並んでいますが、これが後部硝子体皮質により引っ張られ、物が歪んで見える、見たい視野の中心が見えない(中心暗点)、視力が低下するなどの症状が見られます。

 

黄斑変性とはちがうのですか?

黄斑とは網膜の中心の部位を指す言葉で、この部位の病気にはほかに、加齢黄斑変性黄斑上膜(黄斑前膜)などがあります。これらはすべて、視力の中心の黄斑を場とした病気ですので、症状はよく似ていますが、病気の原因、網膜の層における部位が異なり、このため治療法も異なります。

 

黄斑円孔の原因は?

1988年のDonald Gassの論文(Arch Ophthalmol. 1988;106: 629-639)までは、その原因が分からず、不治の病と言われていました。Gassは、硝子体の最外殻(後部硝子体皮質)が黄斑を接線方向に引っ張ることにより黄斑円孔が発症することを提唱し、Smiddyら(Am J Ophthalmol. 1988; 105: 371-376)が硝子体手術により硝子体、硝子体皮質を取り、ガスを眼内にいれタンポナーデすることで黄斑円孔が閉鎖することを示し、手術によって治療できる疾患へと概念が大きく変わりました。
黄斑上膜(黄斑前膜)と同様に、硝子体の老化による収縮がきっかけとなっていて、このため中高年に多いと言われています。このほか、強度近視に続発して起こるもの、網膜剥離を合併するもの、分層黄斑円孔・網膜上膜中心窩分離症などの類縁疾患が知られていて、その成因や合併した病態により、経過、治療や術後の回復に差があります。

 

黄斑円孔を放置すると

自然に治癒することはありません。放置すると病態は悪化し最終的に悪い状態で固定してしまうので、適切な時期に治療を受けるべきです。両目で見て過ごしているから(片目の異常に)気付かなかった、中心が見えないだけで中心外の視野は問題なかったので放っておいた、眼底が見えないほど進行した白内障に対して白内障手術を受けたが視力の回復が悪く、調べてみると黄斑円孔が見つかった、などの場合がありますので、注意が必要です。伊丹中央眼科では、OCTなど最新の検査器械で黄斑疾患を詳しく診察しますので、放置せずにご相談ください。

 

 

治療はどう行うのですか?治療を受ける時期は?

硝子体、そして原因の後部硝子体皮質を手術で取り除き、眼内に特殊なガスを注入します(硝子体手術)。術後はうつ伏せの姿勢を取っていただきます。こうすることで、ガスの浮力と界面張力で円孔が閉鎖していきます。普段慣れていない姿勢をとることで肩、腰などが痛くなることがありますが、伊丹中央眼科では特殊なマットレスをご自宅の安静でも用いていただくように貸し出して、楽に姿勢がとれるようにしています。 伊丹中央眼科では黄斑円孔の治療も、地域に根差し、患者様に寄り添って治療してまいりました。安心してご相談ください。また、病院での入院治療を希望の患者様には、硝子体手術が可能な病院へのご紹介など行っております。

黄斑円孔の術前(左)と術6か月後(右)(黄斑部の眼底写真)

術前の黄斑円孔は手術により閉鎖し、視力も術前0.2から1.0に回復しました。