近視進行抑制治療

伊丹中央眼科では最新の知見に基づき、学童近視に対して”現時点で臨床的に可能な限りを尽くした”近視進行抑制治療を行っています。

近視人口は危機的に増えている!

近視進行抑制

これは2015年にNatureという有名な医学雑誌に掲載された論文1)に添えられた写真です。中国で撮られたと思われる若い男性の集団。でも、、、何か違和感を覚えないでしょうか?

そう、見渡す限り、メガネ!メガネ!メガネ!

近視の人口はアジアを中心に急激に増加しており、この勢いが続くと2050年には世界人口の50%が近視になると予測されています2)。しかし東アジアの若い世代においては、20歳の時点で90%が近視という報告もあり、日本に於いても東京都内では小学生の約80%が近視、中学生では約95%が近視で強度近視の割合も10%を超えていることが判りました3)

近視の度数が強くなればなるほど、緑内障、網膜剥離、網脈絡膜萎縮、近視性黄斑症など、視機能にとって重篤な障害を及ぼす疾患を起す確率が高くなっていきます4)

近視進行抑制

中国、台湾、シンガポールをはじめとするアジアの国々では、国を挙げて子供たちの近視進行抑制政策を開始しています。日本の近視人口も同様に急速に増加していますが、残念なことに近年になるまで近視は遺伝要因だから、親が近視なら子供も近視になるのは仕方ないと、あまり積極的な対策はなされてきませんでした。他国に比べると危機意識が足りない状態が続いています。

人類がたった数十年のうちに急速に近視化しているという事実は、私たちに近視という”疾患”への認識の修正を迫っていると思います。しかし幸いなことに、治療の可能性も探索され、実証されてきています。まず、近視の進行においては環境要因が強く影響を及ぼしています。環境要因が何かを探し出し、それをコントロールできれば、近視進行も抑制可能という希望が見えてきている訳です。

伊丹中央眼科では最新の知見に基づき、学童近視に対して”現時点で臨床的に可能な限りを尽くした”近視進行抑制治療を行っています。
子供の年齢、近視度数や個性、保護者の方のご希望なども考慮し、眼科医の社会的責務として、未来を担う大切な子供たちに最適な近視抑制方法を実践しています。

若年のうちに近視進行抑制治療を始めることは、最終的な近視度数を抑え、大人になった時に起こり得る、進み過ぎた近視による重篤な疾患を予防することになります。近視進行抑制の目標は、現時点の近視の度数が進むのを抑制し近視による重篤な疾患の発症を避ける為、最終的な近視度数を-5D(D:ディオプターは屈折度数の単位)以内に抑えることです。 

近視進行抑制治療は開始時期が最も大事で、理想的には小学校低学年から始めることをお勧めします。
近視の進行(≒眼軸長の伸び)は身長の伸びと相関するので、女子は中学生、男子は高校生あたりまで続きます。近視抑制治療は、少なくともこの時期まで貫徹することが大切です。

近視治療の流れについて(完全予約制)

近視進行抑制治療は若年で開始するほど効果的です。
第一選択は「オルソケラトロジー(オルソK)」と「低濃度アトロピン点眼」の組み合わせですが、既に近視の度数が強くなってしまっている場合はオルソKの適応外となってしまいます。

オルソケラトロジーについて詳しくはこちら

そのような場合には、近視抑制効果が期待できるデザインの「多焦点ソフトコンタクトレンズ」と「低濃度アトロピン点眼」の組み合わせを提案しています。

多焦点ソフトコンタクトレンズについて詳しくはこちら

また”どうしても目にものを入れるのは無理!”という場合は、コンタクトレンズが装用出来るようになるまで、「二重焦点眼鏡」(遠用と近用部分がハッキリ分かれているタイプの遠近両用眼鏡)を用います。
近視抑制治療は完全予約制です。

ご希望の方はまず通常診療として来院して頂き、近視の度数などを調べます。再診からは予約制となり、データを基に治療を開始します。

 

近視抑制治療を詳しく知りたい方へ

学童の近視進行抑制治療最新情報をもっと詳しくお知りになりたい方は,下記書籍をご参考下さい。

「クリニックではじめる 学童の近視抑制治療」
 編集:平岡孝浩,二宮さゆり
 文光堂HP(https://www.bunkodo.co.jp/book/I2ZOMIIL30.html

<引用文献>
1) Elie Dolgin. The myopia boom. Nature volume 519, pages276–278 (2015)
2) Brien A. Holden et al. Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050. Ophthalmology. 2016, 123(5):1036-4
3)Yotsukura E, Torii H et al. Current Prevalence of Myopia and Association of Myopia With Environmental Factors Among Schoolchildren in Japan. JAMA Ophthalmol(オンライン版)2019 .
4) Flitcroft DI. The complex interactions of retinal, optical and environmental factors in myopia aetiology. Prog Ret Eye Res 2014;31622-60