白内障手術

日帰り白内障手術の現状

欧米先進国における白内障の日帰り手術はおよそ90%にも及びます。
一方日本国内では、数年前までは40%台と低い状態にありました。
しかしこの数年で、日帰り手術へのニーズと認知は、劇的に変化しました。
まず、全身麻酔など集中的な治療を要する小児をのぞき、白内障の手術自体は入院を必要としません。
入院での白内障手術は、病院にもよりますが数日から1週間程度までまちまちですが、術後の診療や点眼はその後も必要で、こういった入院期間は患者様の希望よりも各病院のルールで決められています。
また高齢者においては入院による環境の変化で認知症が悪化したり、慣れないベッドからの転倒や食事を含む環境の変化による問題(例 嚥下性肺炎)を招く恐れがあるとされています。
日本の眼科医療は欧米先進国と同等、もしくはより進歩しています。
手術技術のために日帰り手術が不可能ということは決してなく、むしろ日本における入院手術は、入院による病院経営上のインセンティブによるものであると考えられています。
そして最近のコロナ禍におけるステイホームの考え方や医療施設におけるクラスター発生のリスクなどが考慮され、眼科手術の多くは我が国でも日帰り手術へと変化しています。
入院による慣れない環境、同室の方への気兼ねなどのマイナス面のない、慣れたご自宅での術後の養生が望まれています。なお眼帯などは翌朝診察時に外され、眼帯はなしとなり、ガーゼなどの目を覆うケアは不要です。

こんな症状は白内障の恐れがあります

白内障手術

濁った水晶体を取り除いて、人工の眼内レンズを挿入します。
点眼剤による局所麻酔で手術を行い、手術の所要時間は通常5~10分ほどと短時間で終了します。当院では、最新の白内障手術装置(アルコン社 Infiniti、Constellation、ニデック社 Fortas)を採用しています。
安全性は非常に高く、翌日から視力の回復が望まれるケースがほとんどです(白内障の進行具合や他疾患の有無などによって個人差がある可能性があります)。
全身状態により日帰り手術が難しい方・入院加療を希望される方には、近隣もしくはご希望の総合病院にを紹介しています。

白内障手術の流れ

①手術前の診察検査

①手術前の診察検査

Step 1 初診

目の検査を行います。視力低下の程度や白内障の進行度によって、患者様と相談しながら手術の説明と検査を行う日の予約を取ります。

Step 2 術前検査と手術説明

眼軸長・角膜内皮検査などの目の検査、採血などの術前検査を行います。
手術の説明をします。ご家族などご一緒に聞かれたい方の同席をお勧めしています。

Step 3 手術の前の診察(土曜日の定例手術の場合、その週の月曜日もしくは火曜日)

手術についてご質問・ご不安がないかをお聞きし確認をして、同意書を回収します。術前の点眼指導を行い、診察後に、手術当日について来院時間などをご説明します。

Step 4 手術3日前~当日

手術の3日前から当日まで、当院からお渡しする抗菌薬の点眼を行っていただきます。(Step 3の点眼指導でご説明します)

②手術当日の流れ

手術当日①

Step 1 ご来院

安全のために付き添いの方と一緒にご来院ください。術後のご自身での運転は危険なため、ご家族などの送迎もしくは公共交通機関をご利用ください。帰りのタクシーを希望の患者様は受付でそのようにお申し付けください。
心電図のシールが貼りやすい、胸元の開く楽な格好でお越しください。
細菌感染防止のため、女性は化粧をしないで来院してください。

Step 2 手術のための準備

血圧測定・点眼を行います。
ゆるい術着を上から着用していただきます。
リカバリールームでお待ちいただきます。

Step 3 手術

ドレープ・点眼による局所麻酔で痛みはありません。目をやさしく固定する器具を用いるため、無理に目を開ける必要はありません。

Step 4 手術後

手術後は着替えを済ませ、ご帰宅いただけます。
必要により、リカバリールームで安静に過ごすことも出来ます。
術後から翌朝まで眼帯を着用します。
術後の注意点などをスタッフが説明します。ご自宅で痛みなどご不安なことがありましたらお渡ししたドクターの連絡先にお電話ください。
翌朝までは洗顔・洗髪を控えてください。

術後の診察

Step 5 術後の診察

手術翌日・2~3日後・1週間後・2週間後などのペースで診察を行います。

白内障手術の費用

1割負担 片眼 15,000円程度
両眼 30,000円程度
3割負担 片眼 45,000円程度
両眼 90,000円程度

眼内レンズの種類

眼内レンズの種類

眼内レンズは、患者様の目の状態や各種検査の結果をもとに、ご希望をお聞きし、種類や度数を選択します。
保険適用ができる単焦点眼内レンズと、保険適用外(選定療養など)の多焦点眼内レンズの2つがあります。

単焦点眼内レンズ

従来の白内障手術で用いられる一般的なレンズです。1カ所で焦点が合うレンズで、鮮明な視野が得られます。
焦点が1点でしか合わないため、遠方でピントを合わせると近くのメモや本を見るときは、眼鏡が必要になります。
健康保険適用で手術ができます。

多焦点眼内レンズ

遠距離・中距離・近距離で焦点が合うレンズです。
したがって、眼鏡の使用頻度を減らせます。
眼鏡がなくても遠くも近くも見ることができ、快適に過ごせます。慣れるのに時間がかかる場合があります。
保険適用外(選定療養)で手術を行います。

多焦点眼内レンズについて詳しくはこちら

乱視矯正白内障手術

角膜の乱視を、白内障を治すのと同時に矯正する白内障手術です。乱視矯正眼内レンズを用いますので、通常の白内障と手術そのものは大きく変わりなく、所要時間も同じです。
当院の術者の二宮欣彦はこの乱視矯正眼内レンズ(トーリックレンズとも呼ばれます)のパイオニアで、日本ではもっとも早期から必要な患者様の治療に用いていて、毎年多くの学術活動を行っています。

乱視とは

乱視とは乱視とは近視・遠視と並び、屈折異常のひとつで、縦(通常の姿勢での鉛直方向)とか横(水平方向)などの方向(これを経線といいます)によって、眼球全体の屈折力が異なる状態を言います。
乱視の主な原因は角膜にあります。
これはひとつに、角膜は柔らかい組織ですのでレンズといっても磨かれた工業レンズのように精巧には出来ていないからです。ですので乱視の全くない角膜はありえません。
また角膜はその前にある空気と屈折率が大きくことなるために、眼の全体の屈折に大きく関わるからです。屈折力でいうと、眼のもうひとつの凸レンズである水晶体のざっと2倍あります。

乱視の種類

乱視の種類乱視には種類があります。ピントの合う位置と網膜との関係から近視・遠視が決まるのですから(屈折異常(近視・遠視・乱視))、2つの経線上での屈折から、近視性乱視、遠視性乱視、そして混合乱視の3種類に分けられます。
このほか正乱視と不正乱視(メガネで矯正できない「いびつ」な乱視)という分類があります。
また、2つの経線を強主経線と弱主経線と呼びます。

乱視の表し方

乱視を表すのに、眼科医や眼鏡店では、軸(主経線の方向での分類)と強さ(方向(経線)による屈折力の差)を用います。例えば近視の強さを表すのに、裸眼視力ではなくその強さ(単位はD(ディオプトリー)を用いるのと同じです。軸は強主経線の角度(°)を用います。強さは強主経線上と弱主経線上の屈折力の差(単位はD)で表します。
全白内障患者様の16%において角膜乱視が1.50 D以上あることが分かっていて、これだけの乱視があるとこのままでは白内障手術後にこの乱視の矯正のために眼鏡が必要になります。

乱視矯正眼内レンズ

そこで白内障手術の際に、角膜の乱視を併せて矯正する乱視矯正眼内レンズと呼ばれる眼内レンズが登場しました。当院の二宮欣彦はこのレンズの本邦におけるパイオニアのひとりで、これまで多くの講演・論文をあらわしています。
乱視矯正眼内レンズには、乱視度数などから計算されるレンズ度数と乱視軸マークがあり、手術ではその眼に適した度数のレンズを選択して、角膜の強主経線と一致する向きに乱視矯正眼内レンズの弱主経線を合わせて固定します。このための術前検査、レンズの選択、そして手術の各ステップにも精密なノウハウがあり、伊丹中央眼科では学術的裏付けと豊富な経験で乱視矯正眼内レンズを用いています。

メガネなしの快適な生活を目指して

白内障で手術を受けられる患者様には大きな期待とご不安があると思います。
よく見えるようになりたいというご期待を、われわれ伊丹中央眼科では真摯に受けとめて、おひとりおひとりがもつ術後の理想のイメージを理解してその実現に向けて寄り添っていきます。
例えば、お若いころから近視で眼鏡が離せなかった白内障患者様。
白内障の手術後に、もし近視も治って眼鏡なしに街を歩けたら、と願っていらっしゃったら、近視を矯正するようにレンズ度数を選ぶだけではなく、もともとの角膜乱視をきちんと矯正する乱視矯正眼内レンズを用いるように致します。「眼鏡なしでよく見えたい」というお気持ちを実現するためには、近視だけでなく乱視も治す必要があるからです。
単焦点眼内レンズをご希望の患者様には、乱視矯正眼内レンズに関わる検査やレンズについて、特別な金銭的ご負担はまったくかかりません。私たちは、眼と視力のスペシャリストとして、現在の医療で可能なことのベストを真摯に尽くして患者様の見え方を少しでも良くしたいと努力しています。なお、これまで説明申し上げましたように乱視は光学で定義される屈折異常であり、俗に「お月さまを見たときに二つに見える」と素人言葉で表現される状態は乱視ではありません。こういったことは、白内障を含むいろんな眼疾患そして屈折異常すべてで起こりうる現象です。
また、多焦点眼内レンズは遠くだけでなく、近くも老眼鏡の助けなしに見えるようになるレンズです。しかし同時に乱視が矯正されないと、術後の見え方が不完全になり、結局、眼鏡が必要になってしまいますので、このレンズには特に角膜乱視の矯正が重要です。ですので多焦点眼内レンズをご希望の患者様には、乱視が強い場合は乱視矯正多焦点眼内レンズの必要性をご説明の上、用いるようにしています。

伊丹中央眼科は、角膜乱視を術前に評価するための複数の検査器械を揃え、すべての白内障手術前の患者様にその検査を行っています。患者様おひとりおひとりの眼をきちんと検査し、患者様のご希望を理解して、ご期待にお応えするために、伊丹中央眼科は全力を尽くしています。

Q&A

白内障は治りますか?

白内障は点眼薬で進行を抑えることに限界があります。病状が進行した場合は手術が必要になります。

手術に痛みはありませんか?

手術による痛みはありません。点眼による麻酔のため、麻酔導入時の痛みもありません。ご不安や痛みに敏感な方は、鎮静剤の内服や、眼の奥に麻酔を加えるテノン嚢下麻酔も加えることで対応しています。また当院での手術には麻酔標榜医が付き添い、全身の変化にも対応できるようにしています。

手術の時間はどれくらいですか?

だいたい5~10分ほどで終了します。症状の程度によっては時間がかかる場合がありますが、これはもともとの疾患の状態が異なったり、術後のより良い視機能のために必要な場合などです。当院では、丁寧な手術治療を行っています。

手術をすればもう白内障になりませんか?

白内障手術は、水晶体を眼内レンズに取り換えるため、白内障になることはありません。ただし、後発白内障といって、残した水晶体の袋が術後に混濁を起こし、視力の低下が起こる場合があります。この場合は外来での簡単な処置である、YAGレーザーで濁りを取り除きます。

手術後どれぐらいで見えますか?

術後から翌朝までは眼帯をしていますが、ほとんどの方が翌朝に眼帯を外した時点で良く見えるようになっています。術後の炎症が酷い場合や角膜の状態が悪い場合は、はっきりと見えるまでに数日から数週間かかることがありますが、まれです。なお、ほかに目の病気がある場合は、そのために見え方に限界があることがあります。

手術をすれば視力が良くなりますか?

白内障だけではなく、網膜や角膜・視神経に異常がある場合は、手術をしても視力があまり変わらない場合があります。白内障による濁りは除去できるので、見え方は明るくなります。

白内障手術による合併症はありませんか?

手術による合併症が起こる可能性は低いですが、まれに起こる場合もあります。その場合には臨機応変かつ適切に対応しています。例えば眼内レンズを固定するのに硝子体手術が必要になることが稀にありますが、伊丹中央眼科では硝子体手術の経験も豊富な術者が白内障手術を行っておりますのでご安心ください。