加齢黄斑変性

加齢黄斑変性とは?

加齢黄斑変性とは、網膜の中心の黄斑と呼ばれる部分に老化現象のため黄斑部の網膜の下に新生血管が生じる病気です。 視力が低下したり、ゆがんで見えたり(変視)、左右で色が異なって見えたり、真ん中だけが見えにくくなります(中心暗点)。

加齢黄斑変性の診断法は?

まず視力検査を行います。中心のかすみを自覚されている場合は、中心視野または中心暗点の検査をします。その後、散瞳した上で眼底検査を行い、黄斑部を中心に詳しく見ます。
点眼にて散瞳して精密眼底検査を行います。典型的な所見として、黄斑に出血や浮腫、黄白色の滲出斑(血液中のタンパク成分が網膜の下に蓄積したもの)などが見られます。OCTで網膜を層別に調べ、病態およびその病期などを診断します。また、必要により眼底造影検査を行います。
これらの検査で、病巣部の範囲、新生血管の有無、病気の活動性を調べます。

加齢黄斑変性の2つのタイプ

1. 滲出型(wet type)

新生血管と呼ばれる異常な血管が黄斑に発生し、網膜側に生えてくるタイプです。新生血管の血管壁はもろく、血液や血液成分が黄斑の組織の中などに滲出し、黄斑機能すなわち視野の中心の視力を傷害します。かつては難治と言われていましたが、最近、治療の進歩が著しく、視力の改善や維持が望めるようになってきました。

2. 非滲出型(dry type)

黄斑の組織が加齢とともに萎縮してくるものです。症状の進行はゆっくりで、萎縮部分が拡大し中心窩にかからなければ、高度の視力障害にはいたりません。特別な治療法はありませんが、滲出型へ変化し進行が早まることもあるので、定期的に通院することが大切です。

 

治療法は?

1.内服治療

出血予防のために止血薬を内服したり、網膜に栄養を与えるサプリメントを摂取する方法があります。 なお喫煙は加齢黄斑変性の発症と増悪に強い相関関係があることが証明されています。喫煙をされる方は禁煙するようにお願いします。

2.レーザー光凝固

新生血管が中心窩に達していなければ、新生血管をレーザー光線で凝固します。これにより新生血管の活性が治まると、病気の進行は止まりその時点の視機能を保つことができます。
しかし血管を焼き潰すほどの強いレーザー光を当てるため、新生血管とともに周囲の正常な網膜も破壊されることがあります。
凝固部は暗点(見にくい領域)になることがありますので、一番大切な中心窩を含む加齢黄斑変性には、次にあげる硝子体注射(抗VEGF療法)を用いて治療するのが、一般的です。

3.硝子体注射(抗VEGF療法)

病的な新生血管の成長や血液などの漏出を引き起こす原因となる眼内の物質(VEGF、血管内皮増殖因子)の働きを抑える薬を眼の中心の硝子体(しょうしたい)に少量注射します。処置室で行うことが出来、入院を必要としません。4週毎もしくは6週毎に1回の注射の反復が必要で、いつまで注射をするかは医師が病気の状態を診察して判断します。
注射の前に点眼麻酔による局所麻酔を行います。飛蚊症、白目の出血(これらは消退します)、場合により白内障の進行や感染症などの副作用があり、処置後には抗生物質の点眼を行っていただきます。

加齢黄斑変性に対する硝子体注射の処置前(左)と治療後(右)(OCTによる網膜断層検査)

処置前に黄斑部に認められた滲出物は、注射により消失しました。

3.光線力学療法(PDT: Photodynamic Therapy)

レーザー治療のひとつですが、正常な組織をほとんど傷つけずに新生血管だけを破壊することを狙います。
まず光に対する感受性を持つ薬(ビスダイン®)を、肘の静脈から注射します。その薬が中心窩の新生血管に到達したときにレーザー光を当てて、その薬に化学反応を起こさせます。その結果、異常血管は閉塞し、血液の漏れを防止することができます。
使用する薬は新生血管には多く取り込まれますが、正常な組織にはほとんど取り込まれません。そのため、周囲の網膜には障害がなく、視力が落ちたり、暗点ができたりすることがありません。しかし、治療後に視力が低下することもありうること、また病変のサイズが多すぎる場合、進行した糖尿病網膜症など網膜血管の病気がある場合や薬に対するアレルギーがある場合には注意が必要です。
光に対して反応する薬を使いますので、体から薬が抜けるまでは、強い光に当たらないようにする必要があります。治療後5日間くらいは、長袖上着、長ズボン、帽子、サングラスを着用するか、日中の外出を避けてください。
継続治療が大切で、1回で新生血管が消えることは少なく、3ヶ月ごとに定期検査を受ける必要があります。新生血管が残っていれば、治療を行います。

 

加齢黄斑変性による重篤な合併症は何ですか?

網膜下出血は加齢黄斑変性の患者様でしばしば見られる合併症です。発症して間もない(一週間以内)の新鮮例では目の中にガスを注入して数日間うつ伏せの姿勢を取ることで、網膜下出血は黄斑部から周辺部に移動して、視力が改善する可能性があります。一週間以上を経過した例では硝子体手術によって人工的に網膜剥離を作成して、ガスを注入すると網膜下出血が黄斑部から周辺に移動し、視力が改善する可能性があります。複雑で専門的な治療ですが、伊丹中央眼科ではこういった高度な医療にも対応しています。

①加齢黄斑変性による網膜下出血の術前 
②手術1週後 
③2週後
※超広角検眼鏡Optosによる眼底写真

術前、黄斑部を含む巨大な網膜下血腫を認めましたが、硝子体手術とその後のガスにより血腫は下方に移動し、黄斑部の血腫は消失しました。
手術終了時に注入したガスは、手術1週後には上の方に少し残っていますが、手術2週後には消失しています。


加齢黄斑変性の重篤な合併症である、網膜下そして硝子体出血に対する手術は、血液の溶解と神経毒性の問題から適切な時期を逃さずに手術を行うことが大切です。


伊丹中央眼科は、加齢黄斑変性について専門知識と経験を持ち、光線力学療法(PDT: Photodynamic Therapy)の認定医の資格を有し、また硝子体注射(抗VEGF療法)については眼球への注射に関する十分な知識・手術を含む多くの治療経験のある眼科医が、最新の診断機器を使って、診断と病状に応じた最適の治療を行っています。
時期を逃さない、専門性の高い診療を行っています。お気軽にご相談ください。