糖尿病網膜症

糖尿病でなぜ目が悪くなるのでしょう?

 

網膜とは眼球の奥にある厚さ0.2ミリ程の、カメラにたとえればフィルムの役を果たしている神経の膜です。糖尿病網膜症はその網膜の毛細血管が損傷を受け、血流が悪化して起こる慢性疾患です。
糖尿病になると血糖値が上りますが、この有効利用されない糖が血管内で細胞毒性を持つ物質に変わり、これが全身の血管(内皮細胞)を傷めてしまいます。体の中でもとくにその影響が強く出るのが網膜、腎臓、末梢神経で、これらに不可逆な変化が起こることをそれぞれ網膜症、腎症、神経症といい、まとめて糖尿病3大合併症と呼びます。
網膜の血管が破綻すると、まず血液中の成分が網膜組織内に洩れ、水膨れ(浮腫といいます)、血中成分の網膜組織への沈着(硬性白斑)、網膜出血が起こります。さらに進行し網膜の血管が詰まると、網膜の酸素や栄養が不足し、新生血管と呼ばれる、破綻しやすい血管が生じます。新生血管は、まわりに線維性の増殖組織を合併し、網膜から硝子体皮質にツルのように伸び、その結果、硝子体が新生血管や網膜を引っ張って、硝子体出血や(牽引性)網膜剥離を起こす段階に至ります。こうして、黄斑浮腫、白斑、網膜出血や硝子体出血、網膜剥離、さらには血管新生緑内障を引き起こし、最終的に失明にいたる可能性のある、恐ろしい病気です。現在、成人の途中失明の原因の第2位にランクされています。第1位は緑内障ですが、糖尿病による新生血管を含みますので、糖尿病による目の病気は、本当はかなり深刻といえます。
また糖尿病は、網膜症、緑内障の他、白内障、ぶどう膜炎、眼筋麻痺などさまざまな眼の病気を引き起こします。

診察はどのように行われるのでしょうか?
定期検査が大切と言われますが、なぜでしょうか?

糖尿病の発病から10年の間に半数以上の方に糖尿病網膜症がおこるといわれています。網膜に小さな出血、血管の瘤(こぶ)、白斑などができる初期の段階では、視力も衰えず痛みもないため、本人は病気に気づきません。自覚症状が出たときには糖尿病網膜症はかなり進んだ状態で手遅れになっていることがほとんどです。糖尿病網膜症は少しでも早い段階で発見されなければなりません。
糖尿病と診断されたらまず眼科医の精密眼底検査を受けましょう。
精密眼底検査は、目薬で瞳孔を開き、眼底の状態を医師が直接観察します。当院は超広角眼底観察装置 Optosを配備していますので、医師が観察した眼底を撮影し、わかりやすく説明します。
眼底検査の回数は、眼底に異常の無い方は1年に1回程度、糖尿病網膜症が出ている人は初期なら数ヶ月に1回、そして症状の段階が進むにつれて診察の間隔は短くなります。またほかの精密検査として黄斑浮腫の評価のためのOCTや、腕の静脈に造影剤を注射して眼底写真を撮る造影検査などがあり、伊丹中央眼科ではこれらの検査を随時行っています。

治療はどう行うのですか?

血糖のコントロールをきちんとするのが治療の第一歩です。中期の段階なら、レーザー治療(レーザー光凝固)を行います。これは新生血管の発生や出血を予防する治療で、痛みはなく外来通院で治療することができます。また黄斑浮腫には硝子体注射(抗VEGF療法)を行います。硝子体出血や網膜剥離など、失明の危険が迫った段階になると、硝子体手術を行います。

糖尿病網膜症による新生血管の発生(1)、硝子体出血の合併(2)、そして硝子体手術1か月後(3)(超広角眼底観察装置 Optosによる2年間の追跡)

(1)糖尿病網膜症が悪化し、外来処置でレーザーを広範囲に行っていましたが(白黒のゴマ塩状のたくさんの斑点の部分)、新生血管が徐々に成長してきました(画面下の赤いところ、一部網膜の前に出血)。
糖尿病網膜症
(2)上の(1)の約2年後、硝子体出血を発症し、視力が著しく低下しました。このため当院で手術を受けられました。
糖尿病網膜症
(3)硝子体手術を行い、硝子体出血を取り除き、新生血管も除去し、視力は改善しました。

糖尿病網膜症

伊丹中央眼科では糖尿病網膜症に対して、最新機器を用いた定期的診察と説明、レーザー治療・硝子体注射(抗VEGF療法)、そして硝子体手術など、一連の治療を行える専門性の高いクリニックです。安心してご相談ください。